【事例】
根抵当権の債務者が破産したため(※1)、保証協会等への根抵当権移転登記の前提として、元本確定登記をしたいが、設定者が元本確定登記に協力することが期待できない。
このような場合のために、根抵当権設定者が手続に関与することなく、金融機関等の根抵当権者の単独申請によって元本確定登記を申請することができる方法があります。
手順は、下記のとおりです。
手順
- 1
根抵当権設定者宛てに、配達記録付内容証明郵便にて、元本確定請求に関する「通知書」を発送します。
不動産が複数あって設定者(所有者)が物件ごとに異なる場合、不動産が共有の場合については、それぞれ各別に送る必要があります。
書式ダウンロード(word文書) - 2 上記1が債務者に到達
- 3 登記申請
登記に必要な書類
【1】 元本確定請求をしたことを証する書面 |
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【2】登記原因証明情報 | 通常、上記【1】が、これを兼ねます(つまり、別途「登記原因証明情報」という書面を用意する必要は実際のところありません) 但し、不動産が共有A・B共有の場合で、それぞれA・Bあてに確定請求通知をおくって、別々の日に到達した場合は、遅い方の日付が元本確定の日付となりますが、この場合は遅い方の日付でもって元本が確定したという内容の登記原因証明情報を提出すべきと考えられます(名古屋法務局回答)。 |
【3】根抵当権者の委任状 | |
【4】根抵当権者の資格証明書(会社番号の記載により添付省略可) | 代表者事項証明書または会社謄本がこれにあたります。 |
よくある質問と回答
【Q1】 破産そのものが元本確定事由だとききましたが、そのうえさらに、元本確定請求をすることは可能なのでしょうか?
【A】 破産そのものが元本確定事由ですが、債務者が法人の場合は、不動産登記事項証明書(不動産の謄本)に破産の登記は入らないため、登記上、元本が確定していることがわかりません。
今回の事例のように、「債権譲渡」等の原因で根抵当権を移転する場合は、登記上、元本が確定していることが形式的に読み取れないといけないので、それが読み取れない場合は、元本確定登記をする必要があります。
(ちなみに、法人の破産の場合に、破産の登記が入らない理由は、会社の登記事項証明書〔会社謄本〕に、破産の旨の登記が入るからです。
会社謄本を見れば、その会社が破産していることがわかるから、そのうえ、さらに不動産の謄本にも、破産の登記を入れることはないでしょう、というのが法務局の考え方です。
一方、個人の債務者(ただし、債務者が設定者(当該不動産の所有者)でもある場合)が破産した場合は、不動産の謄本に、破産の登記が入ります。
これは、個人は、会社の登記事項証明書〔会社謄本〕のように、第三者が閲覧できる公示資料がないため、不動産の謄本にその旨を記載しておかないと、取引の安全を害するからです。)
【Q2】 元本確定請求の通知書は、支店の住所でおくったり、支店長の名前でおくっても大丈夫ですか?
【A】 登記申請は、根抵当権者の代表者様(銀行なら頭取、信用金庫なら代表理事)の名前で申請しますので、本店から代表者の名前で発送すべきと考えられます。
【Q3】 確定請求通知を送りましたが、相手方が受け取りません。
【A】 元本確定請求は、「意思表示が相手方に到達する」(文言確認)ことが要件であって、受け取ることが要件ではありません。「受領拒否」でもどってきた場合でも、その書面をもって、元本確定登記を申請することができます。
【Q4】 1つの共同根抵当権で他管轄に不動産がまたがっています(例:名古屋法務局の物件と、岐阜地方法務局の物件)。すべての物件につき、早く確定させたいのですが。
【A】 例の場合、名古屋法務局用の元本確定請求通知書と、岐阜地方法務局用の元本確定請求通知書の2通を同時に発送されることをおすすめします。
仮に、1通の通知書に、全物件を記載してしまうと、1つの法務局がおわったら、次の法務局へ申請、というように、書類を持ちまわって順番に申請していかなければならず、日数がかかってしまいます。